DNA浪漫紀行 第1話

「マンモスがやってくる?」

DNAで解明、マンモス像(ゾウ)!

子供のころ、マンモスが絶滅種であることを知ったとき、無性に会いたくなりました。
ゾウと比べて何が違うの?どのように生息していたの?多くの疑問を抱いたのを覚えています。
そしていま、科学技術の力によってマンモスのゲノムが解読され、ゾウとの違いや生態 が明らかとなってきました。マンモスが身近に感じられるようになりました。

マンモスのDNAから判明した寒さに強いしくみ

マンモス

マンモスは約400万年前に誕生し、1万年ほど前に激減して絶滅していったゾウの祖先として知られています。
シベリアや北米で多くが見つかっていますが、アジアやアフリカにも生息していたようです。
マンモスの体格はゾウに似ているものの、特徴として巨大な牙をもつことや、身体が非常に大きく、大きいものではアフリカゾウの1.5倍もあるそうです。
このように発見されたマンモスの骨や骨格のサイズに基づいた解析の成果としてマンモスの実在が報告されています。

一方、近年、永久凍土の中から全身が凍結状態で発見されたこどものケナガマンモス「YUKA」は、記憶に新しいと思います。
実はこのような凍結して見つかったマンモスの解析から、これまで骨格からでは想像もできなかった大発見がありました。

凍結されたケナガマンモスは腐食が進行しておらず、これまでのものに比べるととても良い状態であり、その組織から細胞が採取できました。
(ちなみに恐竜のように化石になってしまうと、これは炭化した石(石炭)なので、細胞の採取はできません。)
そしてケナガマンモスの細胞から、ゲノム(遺伝子群)を抽出し、そのDNA配列を解読することができたのです。
すると、マ ンモスがシベリアの凍りつく大地でどのように生き延びてきたのかが分かったのです。

生き延びるために遺伝子を適応させた!?

アジアゾウやアフリカゾウはシベリアのような極寒地では生息できません。
マンモスは長い体毛で全身が覆われ、耳や尻尾のように露出した器官は小さいことがわかります。
実は、温度感受性に関与する遺伝子の一つで、皮膚において毛の発育を促すTRPV3という遺伝子の解読から、ケナガマンモスとアジアゾウとでは配列がいくつか異なっていました。
さらにケナガマンモスのTRPV3の機能が、温度の変化に鈍い低感受性であることが実験で明らかになりました。

つまり、低温下でもTRPV3の働きにより、体毛をフ サフサにできることが判明したのです。
進化の過程で、環境によって遺伝子の機能を適応させていったのですね。
長く密生した体毛と厚い脂肪層、熱の損失を最小限に抑える小さな耳や尻尾をしていたのは、このような遺伝子の変化によってもたらされたものでしょう。
そのほかにも、アジアゾウとゲノム全体の違いを比較すると、140万カ所のDNA配列に違いがあり、タンパク質をコードする遺伝子に絞ると、1600ものタンパ ク質が違うようです。
この違いは多いのか少ないのか、実物がいないので詳細は分かりません。
もし、科学技術の発展によりマンモスのDNA配列をすべてゾウのゲノム上に書き換えることができるのであれば、いつの日かマンモスが復元できるかもしれませんね。

個人的には色々な理由からマンモスの復元は賛同できませんがDNAを解析できたことで、マンモスの大きさの迫力だけでなく、当時の生態を垣間見た気になりました。
胸の中がドキドキしました。

参考文献
News & Comment, Nature 521, 18 (2015)
Lynch et al., Cell Report 12, 217 (2015)
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