DNA浪漫紀行 第6話

我が仔はどこからやってきた?

DNA配列からルーツを探る!

米国メリーランド州にある国立ヒトゲノム研究所の遺伝学者、Elaine OstranderとHeidi Parkerは、20年もの間、ドッグショーへ足を運びました。
そこで彼らが成し遂げたことは。。。本号では最近報告されたイヌの新しい進化系統樹についてScience誌の総説を解説します。※1)

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体重が80キロもあるグレートデーンからわずか1キロにも満たないティーカップ・プードルまで、これらはすべて“イヌ”ですが、いったい何が違うのでしょうか?
現在、犬種は350種ほど存在し、それぞれ特有の形質や行動が明らかとなっています。
過去200年間に多くの犬種が誕生し、また同時に遺伝病も受継がれたようです。
これまでの研究では、いくつかの犬種の遺伝的特徴が明らかになっていますが、どのようにしていつ誕生したかはよくわかりませんでした。

DNA浪漫紀行vol.3で紹介したように、イヌの誕生は15,000年〜30,000年前のオオカミが家畜化されたことが起源といわれています。
その後、人々は生活の需要に応じて、イヌを狩猟犬、家族の番犬、動物を集める牧畜犬として共に暮らしてきました。時には戦争へ導いたり、毛皮や食糧、また友達としても活用しました。

最近、大規模なDNA解析により、多くの犬種がどのようなイヌの交配で樹立されたのか、また特定の遺伝病の要因がどのように犬種間で伝達されてきたか明らかとなりました。※2)
Elaine OstranderとHeidi Parkerは20年もの間DNA採取のためドックショーへ通い、世界中のオーナーに協力してもらい、それらのDNAを提供してもらいました。
彼らはすべての犬種がどのように交配されてきたかを追求しました。
現在までに161犬種からなる1346頭を解析しています。

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この数はまだ全犬種の半分に至っていませんが、彼らは各犬種のゲノム上の150,000か所のDNA配列の差異を比較することによって、新たな系統樹を完成させました。
その成果はCell Reports誌で掲載されました。
彼らはほぼすべての犬種をクレード(分岐)と呼ばれる23の大きなグループに分類することに成功しました。
既に遺伝的特徴を示すいくつかの定義はありますが、今回の分類も同様の形質を持つイヌを分類した傾向があります。

身体が丈夫で強く育つボクサー、ブルドッグ、ボストンテリアは第1分類に、シープドッグ、コーギー、コリーのような牧畜犬は第2分類です。
リトリバー、スパニエル、セッターのような狩猟犬は第3分類になります。
これらは特定の仕事をもつ犬種のグループ分けです。
古代のブリーダーは特定の目的のために最も適したイヌを飼い、共に暮らしてきた可能性があります。
そして、人々は過去200年の間に、それらの大きなグループを細分化していったようです。
またこれらの結果は、いくつかの犬種のDNAが複数の分類の中で共有されており、どの犬種がどのように他の犬種を作り出してきたかを示しています。
最も初期の小型犬の1つの中国由来のパグは、1500年代以降、ヨーロッパで他の犬種を小型化するために、交配に使用されました。したがって、パグの DNAは多くの小型犬の中に存在しているようです。

さらにこれらの分類は、獣医が潜在的な遺伝病を発見するのに役立つそうです。
例えば、コリー、ボーダーコリー、オーストラリアン・シェパードに現れるコリーアイ異常と呼ばれる視力障害となる遺伝病が、なぜノバスコシア・ダックトーリング・リトリバーにも現れるのか、これまで理解されませんでした。
しかし、遺伝学的解析によれば、このリトリバーは、遺伝子変異が受継がれる可能性のあるコリーあるいはオーストラリアン・シェパードを祖先とすることが判明しました。
すなわち、異種間の交配によって、異なる犬種の遺伝病を引き起こす変異を共有してしまうのだそうです。

ある研究者は、今後は全ゲノム(25億のDNA配列全体)を比較する研究をすべきだと主張しています。
なぜなら、この報告はすべての犬種の起源を把握するにはとても良い最初のステップであるが、すべての犬種の半数はまだ欠けているからです。
OstranderとParkerもまたこの報告を最終地点ではなく中間点と言います。
「私たちは、やりたい解析のいくつかをやり始めることができる段階に達しました。しかし決してまだ成し遂げてはいません。」と説明しています。

DNA配列から判明するルーツ、はたして我が仔には幾つの犬種のDNAが含まれているのでしょうか?判明できる日はそんなに遠くはないかもしれませんね。

参考文献
1)E. Pennisi, Science April 25, 2017,
DOI: 10.1126/ science. aal1098
2)H.G. Parker et al., Cell Reports 19, 2017
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投稿日:2019年1月7日 更新日:

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