DNA浪漫紀行 第8話

我々の祖先は筋骨隆々のグルメ人!?

DNAから判明した縄文人の性質とは

北海道礼文島の船泊遺跡から出土した縄文人の女性と男性の骸骨は保存状態がよく、歯の中の細胞から採取できたDNAによりほぼ全てのゲノム解読ができたそうです。ゲノム解読から判明した縄文人とは? 今回は縄文人のゲノム解析から解き明かされた縄文人の体質をご紹介したいと思います。

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ヒトゲノム解析は1990年代初頭に始まり、全ゲノム解読が終了したのはちょうど2000年でした。
当時は2200億円もの巨額な研究費がたった1人のゲノム解析に10年間も費やされました。
現在はというと、科学技術の発展によりなんと12万円とお手頃価格になり、かつ2−3日で解析できるようになりました。
そのような背景もあり、ゲノム情報は多くの生物種の解析のみならず、医療現場での治療方針まで多岐にわたり有用化されてきています。

ゲノム解析により判明できることは、生物種固有の情報から進化の過程が判明したり、個々の体質からその個体を取り巻く環境が判明できたりもします。
縄文時代は16000年前から弥生時代が始まる2900年前までの間に栄えた狩猟を主体とした文化で、船泊遺跡の縄文人は3500-3800年前くらいに生存していたようです。

系統的にはウリチ人、朝鮮人、アボリジニ系台湾人、フィリピン人がもつ特有のDNA配列が含まれており、この時代にはすでにユーラシア大陸東側から移住した民族との混血であったそうです。

一般的に縄文人の体格は現代人に比べ身長は低いですが、大腿骨や脛骨が太いことや顎骨が大きく頑丈であったことから、狩猟に適するように脚は太く、硬い食べ物にも適応する丈夫な顎をもつ骨太体型であったようです。

今回のゲノム解析からDNAの変異を現代人と比較するとさらに詳しいことが判明しました。
それらをまとめて再現すると、目の色は茶色で肌色は若干濃く、細い髪の毛をした容姿をしていました。
また体質として、シミが多く、耳垢は湿ったタイプで、お酒にはとても強かったようです。
さらに食べ物に対する耐性も獲得していたようです。

北極圏に住むアザラシなどの海獣にみられる脂肪の多い食べ物も消化できるよう脂っこい食べ物に抵抗性がありました。
まさにグルメ人です。
また、エネルギー代謝異常や心筋症のリスクが高かったことも判明しました。
残念ながらDNA配列で個人の性格を判明する事は叶いませんが、私たちの100世代前の祖先の体質を垣間見ることができたと思うと、なんとなく愛着が湧いてきます。

これから近い将来ゲノム解析はさらに速く安価で身近になると予想され、私たち個々のゲノム情報を共有する日も近いといえます。
さらにヒトだけではなく、ペットにおいても同様で、様々なことが判明すると期待されます。
もしDNA保存が普及していたら、ペットも含め先祖代々の体質の移り変わりや、生活スタイルが判明できたのかもしれませんね。

参考文献
1) Kanzawa-Kiriyama H. et al., Anthropological Science (2019)
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