DNA浪漫紀行 第12話

遺伝子からみる新型コロナウイルス感染症の重症化リスクとは!

α1-アンチトリプシン遺伝子は大丈夫?

早いもので今年も残すところあと少しですが、皆さんはウィズコロナ時代をどうお過ごしでしょうか?
一時に比べると感染者数は減少しましたが、最近ではオミクロン株という新しい変異株も流行しつつありますから、まだまだ安心できない状況が続きそうです。
さて、これまでの研究で、糖尿病や肥満など基礎疾患を持つ人ほど重症化するリスクが高いことが分かっていますが、ピンポイントに遺伝子単位でみてみると一体どんなリスクファクターが存在するのでしょうか。
そこで今回は、遺伝子という観点から新型コロナウイルスとの関係を見てみたいと思います。

重症化に関与するとされている遺伝子の存在はこれまでにもいくつか確認されていますが、近年の研究でα1-アンチトリプシンと呼ばれるタンパク質の遺伝子に起こる代表的な変異である「PiZ」や「PiS」もその要因の1つではないかということが分かってきました。

ここで遺伝子とタンパク質はどんな関係にあるのかについて簡単に解説します。
遺伝子の配列は設計図として、私たちの体を構成するために必要な情報が記されています。
この情報をもとに材料となるアミノ酸が指定された通りの順番・種類で結合することにより、様々な種類のタンパク質が作られるわけです。

α1-アンチトリプシンにおいて、この設計図にあたるのがSERPINA1と呼ばれる遺伝子になります。
α1-アンチトリプシンは394個のアミノ酸によって構成されていますが、その中でも特に342番目にあるグルタミン酸というアミノ酸がリジンというアミノ酸へ置き換わる変異を「PiZ」、264番目にあるグルタミン酸がバリンというアミノ酸へと置き換わる変異を「PiS」と呼び、これら2つの遺伝子変異はα1-アンチトリプシンの機能を著しく低下させます。
この遺伝子変異が起きたα1-アンチトリプシンは、肺細胞を様々な障害から守るという本来行うべき働きができなくなるため、その結果呼吸器系疾患に罹りやすくなったり、新型コロナウイルス感染症になった際に重い呼吸器障害により重症化するリスクが高くなります。

このPiS・PiZ遺伝子変異は、親から子へと伝わっていく先天的な劣性遺伝であるため、「あるリスク」を持つわけです。
それについてはイラストを交えてご紹介します。

正常なα1-アンチトリプシンをAA・PiSやPiZ遺伝子変異によって本来の働きを行えないα1-アンチトリプシンをaaとすると、私たちの遺伝子は、両親から半分ずつと受け継がれていきますから、AAとaaの両親から生まれた子供は「Aa」となりますよね。

このAaは、「変異したα1-アンチトリプシンを保因するものの明確な症状などは現れない」という無症候性キャリアになります。
いわゆるヘテロ型と呼ばれるのかこの状態のことです。
そしてこのような両親からは25%の確率でα1-アンチトリプシンの機能が著しく欠乏したaaの遺伝子を持つ子供が生まれてしまうのです。
これはホモ型と呼ばれ、劣性遺伝として受け継がれます。
この場合、両親自身は健康で全く症状が見られない場合でも、子供や孫の世代にコロナの重症化に関与する可能性のある遺伝子を受け継いでしまうリスクがあるというわけです。

参考文献
Stoller, J. K., & Aboussouan, L. S. (2005). α1-antitrypsin deficiency. The Lancet, 365(9478), 2225-2236.
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